転載許諾Q&A:政府刊行物の著作権(日本と米国)の扱いは?

政府刊行物については、「当然許諾は不要」と考える方がいらっしゃいますが、少なくとも我が国の政府刊行物には著作権があるものが殆どであり、無断で利用することはできません。著作権法上では権利の対象とならない著作物として「憲法その他の法令」「告示・訓令・通達等」「判決等」およびそれらの「翻訳物・編集物」が上げられています。また外国の法令、未批准の条約、政府作成の法律案等も含まれると解釈すべきである、とされています。その一方で学術的な報告書、国土地理院の地図などは著作権の対象となるとされています。

医薬プロモーションの世界では、白書や人口動態統計、国民健康・栄養調査といった統計、研究班の報告書などが良く出てきますが、許諾についてどうすればよいのか、厚生労働省などに問い合わせても、なかなか明確な返答が返ってこないのが実情です。

著作権法32条の第2項は次のようになっています。

2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般
に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資
料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新
聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨
の表示がある場合は、この限りでない。

この解釈は、大幅引用だけでなく、全部転載もみとめている「借用規定」とでも
いうべきもの、とされています。(著作権法コンメンタール:2巻p.186)

条文からあてはまる要件を抜き出すと、以下のようになります。
(1)国、もしくは地方公共団体の期間、独立行政法人または地方独立行政法人
が作成したもの。
(2)一般に周知させることを目的として作成されたもの。
(3)説明の材料として使う場合。
(4)禁転載との記載がないこと。

(1)については、上記の機関の名義のもとに公表する広報資料、調査統計資
料、報告書その他これらに類する著作物で、発行ではなく、作成とされているの
で、執筆、編集が上記であれば印刷発行の主体が民間でも対象になると言われて
います。(著作権法コンメンタール:2巻p.208)

(2)については、政府が発行している白書の類、文部科学白書とか経済財政白
書等、ただし、学術論文と同性格のものは含まれない(著作権法逐条解説:p.245)

(3)については、それを丸ごと複製したものを販売するようなことは認められ
ないが、説明文がすくなく、転載のほうが分量が多くても問題とはならない。翻訳も全文の資料の転載も認められている。(著作権法コンメンタール:2巻p.209)

(4)については、統計資料などには「禁転載」の記述はないようです。その一方でこれらの統計資料から作成された「国民衛生の動向」などには「禁転載」の表示があります。

ただし、著作権法上は、あくまでも「転載」とあるので、公衆送信(WEB掲載)するときなどは許諾が必要になります。

海外ではどうか、これも国によって様々ということになりますが、米国の場合は米国著作権法105条によって、政府職員が職務上作成した著作物は著作権が成立しないとされています。NIHやFDA,CDCなどの出版物はそのため自由に使えるケースが多いと思います。ただし政府職員とそうでない人の共著の場合は、その著作物は必ずしも自由に使えるというわけではありません。
まずは出版物の著作権に関する記載を確認すること、これから出発するという原則になります。